虚飾を排し，贅肉を取り，素直に，真摯に，厳しく，そして素朴にワイン造りに取り組む
　　デュックのボージョレは，美辞麗句を並び立て，流行を追ったスマートで洗練された
　　ワインからは最も遠い。
　　
　　しかし，これこそ本物のボージョレだ。
　　そんなデュックのワインの真価が見事に証明されたエピソードがある。
　　著名なソムリエ　ジャン＝リュック・プトーが，ドメーヌ・デ・デュックのサン・タムールを
　　ニュイ・サン・ジョルジュであると断言したのである。

　　1983年にベルギーのブリュッセルで開催された第1回世界ソムリエコンクールで，
　　初代世界最優秀ソムリエに選出されたジャン＝リュック・プトーだが，サン・タムールの
　　生産者が主催したサン・タムール限定のブラインド・テイスティングの席上で
　　「ニュイ・サン・ジョルジュが混じっている。トラップに掛かった！」と公言したのである。

　　しかし何を隠そう，プトーがニュイ・サン・ジョルジュだと信じて止まなかった1本は
　　ドメーヌ・デ・デュックが手掛けたサン・タムールだったのである。
　　世界一のソムリエでさえ見紛うほどの質は，まさにボージョレにしっかりと根を張る
　　ドメーヌのなせる業と断言できる。

　　ドメーヌの創設は1960年と比較的歴史は浅いものの，元来デュックは17世紀後半
　　（10世代以上前）から葡萄栽培に携わってきた葡萄栽培のエキスパート。
　　あくまでも葡萄の質に強いこだわりを示し，1ヘクタール当り1万本と密植率を高め，
　　逆に1本の房数を8〜10に抑えている。
　　リュット・レゾネの原則を遵守して育まれたヴァンダンジュ・タルディーヴのガメィ，
　　しかもヴィエイユ・ヴィーニュの葡萄から生まれるワインは長期熟成させてこそ初めて
　　真価が発揮される荘重なものだ。

　　まるでニュイ・サン・ジョルジュと見紛う深遠な面持ち，立派な造形とがっしりとした
　　強固な骨組み，その重厚壮麗な迫力と恰幅の良さは現今随一で，豊かな肉付けを
　　伴ってほんの僅かな軽薄さもみられない。

　　これこそ，真のボージョレであり，史上最も重厚なボージョレと言えよう。
　　世界一のソムリエにニュイ・サン・ジョルジュと言わしめたドメーヌ・デ・デュック。
　　サン・タムールの哲人が手掛けるプリムールは，貴方が玄人であればあるほど
　　無上の幸福感に導いてくれることは間違いない！

　　　　　　ここ数年、ボジョレー・ヌーヴォーのランドマークとして話題騒然となった　名門デュック家。　
　　　　　　しかし、実力の高さはヌーヴォーに限ったことではない。
　　　　　　12世紀から続くこのドメーヌは、サン＝タムール＝ベルヴューにあり、
　　　　　　ACサンタムールの指標にもなっています。